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    精神科における誤診の分析

    石川憲彦


    1946 年生まれ。精神科医。東京大学医学部卒。 1987年まで東大病院を中心とした小児科臨床、とりわけ障害児医療に携わり、共生・共学の運動に関与。 患児らが成人に達し、東大病院精神神経科に移る。1994年、マルタ大学で社会学的調査を開始し、 1996年から大学生の精神保健を担当。同所長を経て、現在は林試の森クリニック院長。 著書に『子育ての精神医学』(ジャパンマシニスト社)、『親たちが語る登校拒否』(共著、世織書房)、 『わが子をどう守るか』(学苑社)など。

    出典;www.hanmoto.com/bd/isbn978-4-8265-0445-4.html

    写真はfonte誌







    概要;


     治療原性精神障害の可能性を全通院者の17%に認めた。 転医例の4分の1、精神科からの転医例の3分の1、 前医への不信から転医例の3分の2に及ぶ。

    治原性障害可能性の半数は、狭義の治原性障害(誘発障害)で、その大半は薬剤使用の誤り、 とりわけ大量の抗精神病薬による物質誘発性気分障害と精神安定剤による薬物依存であった。

    正確な診断、正確な薬剤処方(単剤・最低量投与の原則の厳守)、適切な指導など、 基本的な医療知識や治療姿勢の確立が、医原性疾患の予防の中心となると考えられる。







    掲載者による解説;


    誤診は、人間が行う診断において避けられないことであるが、それによって「病気を創り出す」行為は、避けられることであるというのが、 この論文の主張です。

    そのためには、どうして、どのように、発生しているかという分析は必須のものです。 しかしながら、他医の誤りを主張しても、「治療法の違い」と反論されて終わりかねないこの種の研究は、稀です。

    医師達による加害行為に、国による系統的な情報開示も無く、患者達は、診断の不一致が多いことについて無知な状態にあります。







    掲載者による解説;


    この研究における誤診症例は、転院により明らかになったものです。
    転院患者さん39+17=56%の中、3分の1弱の17%に、
    治療による被害が認められました。

  • 精神科における誤診の分析

    目的
      1930年代Hurst,A.F.が提唱した医原性疾患Iatrogenic diseaseは、精神科領域では独自性の要因により系統的研究が少ないが、 予防可能でなくせる障害である。医原性を指摘することは、自らの再点検を迫られる医師としては、できる限り回避したい作業である。

    しかし、今日の医療環境の変化(
    @児童患者の増加
    A非典型例の受診
    B新薬の多発
    C専門性の未成熟
    D医療化社会
    E自傷傾向増強
    Fニーズの変化と不信など
    )に伴い、治療原性の精神疾患(以下、治原性障害)の重要性は増加しており、無視して通過できない医療問題となってきている。

     今回、系統的な研究の可能性を探るため、当院の症例について一次的データの集積を試みた。本来自験例の検討すべき筋であろうが、
    @自己評価は評価者の主観に左右される、
    A「医者を変える」「セカンドオピニオンを求める」といった事態と治療原性障害が密接に関連する事例が多い、
    等の理由により、対象を転医した例に限定した。また、医原性疾患の定義が未確定なため、治原性障害の可能性 (「主として前医で受けた精神科治療によって、転院時の状態が治療前の状態より、明らかに悪化した印象を与える状態」) という広義の定義を採用した。

    対象と方法
     2004年9月―2007年12月の間に当院を受診した全504例の中、カルテ分析可能な431例(母集団と呼ぶ)から転院時点で 「治原性障害の可能性」があるという印象を受けた72例を抽出し、調査の対象とした。
    調査内容は、一般的な患者の状況(性別、年齢、診断、病態、経過、その他)14項目と治原性障害の指標となる内容(状態像、原因、治療など) 47項目で、今回は下記の二つの調査内容について報告する。

    調査1)対象群の特性
    対象群を除いた母集団を、当院初診の192例(初診群)と、他院から転院してきた167例(転医群)に分類し、 (図@)、両群にも一般的な患者の状況について上記14項目の調査を実施した。対象群と各群の異同を、推計学的に分析し、 治原性障害可能性の特性について検討した。

    調査2)再評価
    8ヶ月後(2008年8月)、臨床的に再評価を行い
    (I)治原性障害と(II)障害を引き起こした原因について、下記のように仮分類を試みた上で、 「治原性障害の可能性」の判断の妥当性と両者の相関について検討した。

    (I)治原性障害の仮分類

    A.誘発障害:
    「治療によってICD-10の基準を満たす精神障害が出現した」狭義の医原性障害で、後述の診断分類によって細分類した。

    B.原病悪化:
    「治療によって原病の精神症状が明瞭に増悪した」状態で、後述の診断分類に従い細分類した。

    C.心理社会的悪影響:
    「治療によって長期にわたり社会状態、家族関係、心理的状況などが著しく悪化した」状態で、後述する4項目に細分類した。

    (II)障害を引き起こした原因の分類
    A.薬剤因性:投薬上の問題が、治原性障害の原因となる場合
    B.指導因性:投薬以外の医療者の指導や行為が原因となる場合
    C.その他:医療者の直接の指導ではなく、付随する医療行為や措置が原因となる場合

    (診断の細分類)

    まずICD-10に従って分類し、更に以下のように6細分類に分類した。
    統合失調症(F2の障害)
    気分障害(F3の障害)
    行動障害(F5・F6の障害)
    発達障害(F7・F8・F9の障害)
    適応障害(F4の障害)
    不安障害(適応障害以外のF4の障害)。
    F0・F1は、誘発障害の検討のみに使用し、主診断では非常に少数なので分析から除外した。 なお、精神作用物質誘発性の精神障害に対しては、DSN-IVの物質誘発性障害の分類を参照しつつF0―F9に振り分ける変則的操作を行った。

    (心理社会的悪影響の細分類)

    @セルフイメージ低下:
      不安・失望・自己否定感等セルフイメージの著しい低下
    A社会的変化:
      学校・進路・就労その他の社会的関係における大きな不利益
    B家族関係変化:
      家族の相互不信・誤解・対応の誤り等家族関係の著しい低下
    C反治療感:
      医療不信による服薬拒否・通院拒否等の治療関係の著しい悪化

    (障害を引き起こした原因の細分類)

    A.薬剤因性
    @過剰投薬:投薬量の過料
    A誤投薬:投薬内容の誤り
    B不要投薬:不必要な処方

    B.指導因性
    @誤指導:誤った診断・指導・説明に基づく指導や否定的であったり不必要と考えられる指導など
    A指導欠如:漫然とした診療や必要な指導を行わないなど
    B家族指導:家族指導上の誤り
    C学校指導:学校や所属先などに対する指導の誤り
    Dその他

    C.その他
    @入院の悪影響
    Aハラスメント
    Bその他