分裂病に冒された病者の家族のために
イメージ1
ページタイトルはジュリアングリーンの小説からとりました。ストーリーは、崖から墜落死した旅人の死が自殺か事故かを追及する話です。
私の妻は子供と共にマンション5階より飛び降り、子供は即死、妻は精神科病棟に入院しました。医師の見立ては急性の精神分裂病。この病気の発生率は0.7 から0.9%、つまり、140人から110人に一人です。病気の原因は解明されていませんが、脳内物質の代謝異常が知られており、心がけ良ければ避けうるような病気ではありません。入院患者は34万4千人と言われています。病者の自殺は多く(アメリカでは10年後には10%が自殺か事故死しています)、あなた自身にも、ある日突然、起こりうることです。




妻は一命をとりとめ、閉鎖病棟で警察の取り調べを8ヶ月待ち、退院後は別居を続けています。病気がさせたことにしろ、わが家に屈託の無い笑い声が帰ることはありません。私との同居も、妻を幸せにするうえで、むしろ害毒と考え、妻を実家にお願いしています。家庭は崩壊しました。何が子供を死に追いやり、妻を閉鎖病棟へ追いやったのか? 私は、鬱病であるとの妻の主張を9年間信じ、抗鬱剤の副作用であるとの事故前日の専門医の診断を信じ、結局、家族を守れませんでした。多くの書籍にあたりましたが、「医師の指示が無くても、嫌がる妻を入院させる判断が可能だった」とは、未だに考えられません。この病気は、非常にポピュラーでありながら、日本ではその知識が広まるどころか、国民の無知自体が隠蔽されています。病者の生命を守るには、誤った偏見を捨て、病者自身をも説得して精神科病院を有効に利用するための、家族の十分な理解が必要です。

日本の精神医療
事故後に知ったことですが、この国においては、文明国としては最低の精神医療しかできてないことが、どの本にも書かれています。良心的な医療機関が皆無とは言いません。スシ詰めの病棟。疲れ切った医療スタッフ。禁止ずくめの監禁に基づく、リハビリ無き入院。社会復帰無き地域体制。平均入院日数470日(多分、1回あたり)。元凶は、良心的な病院はつぶれるという、医療制度にあると言われています。良心的療養所の紹介情報も、図書館で4〜5冊調べて、1ヶ所程度と乏しい。この分野における情報の貧困は何によるのか?文献3(「誰にでもできる精神科リハビリテーション」野田文隆 星和書房)をひいてみましょう。

『1988年に施行された精神保健法は、その理念においては「医療から福祉まで」を包括する方向を目指しているが、それを裏付ける国の予算は全く貧弱だし、民間病院への見返りも乏しい。....
2つの方向が必要であると思われる。
一つは、未だに「収容」に厚く「脱施設」に薄い医療法の改正である。....
もう一つは、民間病院自らが地域ケアの中核となって地域とのリエゾンを作る方向である。』
文献2(「図解 精神病マニュアル」雀部俊毅 同文書院)によれば、「国の予算」なるものは、1980年度 848億円、1995年度 323億円なのだそうです。これが、福祉国家をめざす国の実態です。

しかも、医療費の節約により、明確な治療観のない退院が増えています。国が支払う入院時医学管理料は2週間まで5950¥、一月まで3900¥、3月まで2200¥、6月まで1400¥、1年まで1210¥と、大幅に減ります。そのため、病院でいくら差額ベッド代を払っても、3ヶ月をメドに退院を勧められます。かくして、病院選択の自由もなく、患者のリンチ殺人で有名な宇都宮病院には、入院依頼が殺到したそうです。低減期間は、厚生省により、老人の入院を排斥するために、さらに短縮されようとしています。


日本文化に根付いた偏見と誤解の歴史
私自身、事件後、いくつかの専門書を読むまで、以下のような偏見を持っていました。

・分裂病は少数の人間の病気である
・分裂病は治らない
・分裂病は凶暴性を発揮する危険な病気である
・分裂病にかかった人は危険を回避するため病院に収容しておくのが本人のためになる
・分裂病は、性格に問題のある人がかかる。また、家族にも責任がある。
・分裂病は、遺伝する。


事実は、以下のようなものです。

分裂病の発病率はどの国でも0.7%から0.9%である。100人に一人が発病する。
どの書物にも書かれているのに、報道されないことにおいて意図を感じるほどです。私が事後に分裂病という診断を聞いた第一印象は、「まさか」というものでした。

70%の高率で、分裂病の症状は薬により抑えられる。
 但し、ストレスや断薬による再発率は50%を越える。

分裂病者の犯罪率に比べ、マスコミの一面記事になる率は、一般の100倍以上高い。
しかも、犯罪白書によれば精神病カテゴリで殺人事件をおこした人間の66%は「精神病を疑われる者」となっており、治療をうけていない状態にあったと思われる。多くの人は、入院を投獄と思っている。むしろ注目すべきは、分裂病者の自殺率は10〜13%と一般の10倍以上ある点である(「分裂病がわかる本」p260)。100人に一人の分裂病者が、自殺者では10人に1人ということになる。かつて、ライシャワー大使の刺傷事件をおこした沼津出身の青年も、永く幽閉された上で自殺した。

日本の過半数を占める閉鎖病棟は客観的には監獄のような生活しかできない。
 施設の立派な病院ほど、分裂病者を排除しようとします。理由は、病院のイメージを損ない、儲けも少ないからです。満足な治療をしようにも保険点数が低すぎてスシずめ人員不足であり、それどころか、1984年大量殺人をした宇都宮病院や、1994年拉致監禁の越川記念病院など悪徳病院の血生臭い歴史が有る。

分裂病は性格異常と明確に異なった脳の病気である。
 まず、岩波新書「精神病」p21で分裂病が心因性の病気と明確に区別されているように、一般人の「心の病」というくくりかたは誤謬です。心因性でないことはどこの書物にも書かれてますが、トーリーの「分裂病がわかる本」p214のデータを見れば一目瞭然です。薬の利用により一年以内の再入院は33%まで減らせますが、精神療法のみでは63%までしか減らせないのですから、いくら周りが気を使い、本人が心掛けても、何もしない場合の72%というのとほとんど変わりないのです。分裂病にはドーパミンなどの脳内物質を制御する薬物療法の有効度が70%以上と高いのは医師の常識です。決して本人の「心掛け悪くて病気になった」のでも、「気の持ちようで治る」病気でも無いのです。ましてや、「悪い家族」を原因とする説は1952年に提出されたきり多数の反例により廃れています(「分裂病がわかる本」p162)。とどめは「分裂病がわかる本」p132の一卵性双生児の脳のMRI画像です。分裂病と健常者のペアの80%で脳の委縮が確認されています。

分裂病の原因は未解明だが遺伝を恐れすぎるのは見当違いである。
 トーリーの「分裂病がわかる本」p146〜147には、
1)分裂病者の2/3は家族歴に無関係に発病している。
2)一卵性双生児と分裂病の相関をとった最近のデータは相関値30%弱である。
ことが記述されています。遺伝子研究がまったく無効とは言いませんが、30%しか相関が無い遺伝子研究が進んで、80%の相関がある脳委縮のメカニズム究明が遅れているのは、生きている脳内を調べる手段が足りないからに過ぎません。かつて胃かいようのピロリ菌が見つかったように、この病気のウィルス説も消えていません。


このような誤謬は今でも根強いと考えます。根幹には、多くの人にとって無関係と思わせるよう、病理を理解したように報道して誤謬を助長するマスコミと、病者の監禁政策に慣れきった歴史的風土があります。



無いものずくしの日本社会
イメージ2
日本の精神医療の実態については、ネット上の「日米障害者自立生活セミナー in大阪1997.11.18.」に、よくまとめられています。日本の精神医療制度は治療よりも隔離する、国にとって安易な政策に基づいており、国民が知りたがらないから知らせないという図式です。私が強調したいのは、以下の点です。

社会成熟の不足:分裂病者が、自分の病気を公言すると不利益になるような社会は未成熟です。妻の担当医が分裂病を見抜けなかったように、自分から妄想や幻覚を言わなければ、健常者と変わりません。発症時の危険を回避するには、病名を公言することにより、遠ざけられるのではなく、病人としての処遇が受けられる社会が必要です。まず、社会を構成する皆さんの、隔離政策のほうが危険であるとの認識が必須です。

報道の不足:マスコミが分裂病のような多数の人間の病気をとりあげず、少数者の病気ばかりとりあげるのは異常です。精神病が少ないような誤解を助長し、自らもその幻想に囚われています。

政治家の不足:精神医療政策を口にする政治家がいないのは異常なくらいです。アメリカの精神医療の転機はケネディ大統領が公約に掲げたことによると言われています。

医療の不足:開放病棟しか持たない大病院が、分裂病者は自殺企図があるという理由で転院を勧めるのは異常です。病者を選別しているのがあからさまで、医療政策の無策に流されています。自分たちの責務の重大性をアピールして医療費を確保すべきです。

保険制度の不足:保険会社が、大部分の約款に「精神障害による事故」と「自殺」を免責事項に定め、入院給付をしないのは、保険制度の真の意義を忘れています。年老いて死んだ人間のために、いかほどのお金が必要でしょうか。アメリカのいくつかの州では、精神病者の保険に関する平等法案が施行されています。



提言
私は、以下の提案をします。

医療関係者による宣伝:脳の病気である分裂病に、いかに対処すべきかを明らかにし、その社会的意義を外に向かってアピールする時です。30万人を安上がりで劣悪な環境に封じ込め、70万人の病者を治療から遠ざけて悪化させ、100万人の家族を苦しめるのは、医療の本義ではないはずです。分裂病への社会支出が、どれだけ社会への貢献となり、グループホームにより自主管理された病者の、健常者と変わらぬ姿が、どれだけ社会不安を減ずるか。まず、病者の家族にはさまざまな人がいるのですから、教育と援助要請を入院ガイダンスに入れましょう。

マスコミによる文化の構築:マスコミは、今や、脳の病気としての姿を現した、対処可能な病気としての分裂病に関する知識を普及させ、潜航しがちな病者の早期治療を実現するための枠組みを作る、オピニオンリーダーとしての役割を果たす時です。差別用語を姑息に避ける前に、差別の根幹を取り払い、崇高な社会正義を主張する、知識と力があるのですから。

病者による存在の主張:病者と家族にとって、身を縮める時代ではありません。人間としての尊厳を取り戻すため、病者は異常人格者と異なることをアピールしましょう。一般人が病者を恐れるのは、犯罪のみを言葉すくなに語るマスコミ報道以外に、実際に病者と名乗る人物を見たことがないからです。(但し、勤務先には内緒にしましょう!)

家族による無罪の主張:発症の前駆症状により家族関係が悪化するため、家族は疑念と自責にさいなまれてきました。経済的、社会的な閉塞状況に加えて、疲れ切った医療スタッフから、非難めいた言い方をされることもありましょう。分裂病の病因は依然不明ですが、文献12によれば、脳の縮小も観測される脳の病気として認知されています。この病気は、病者にとっても、家族にとっても、「身から出た錆」ではなく、不運以外の何物でもないことをアピールし、制度と設備の拡充を訴えましょう。



参考文献

1.「精神科学:日本医事新報社」1991
http://www.ahs.kitasato-u.ac.jp:8080/docs/qrs/psy/

2.「図解 精神病マニュアル」雀部俊毅 同文書院 1997 
   プロのライターによるマニュアル。FAQなど整理されていて一般人の関心にマッチする

3.「誰にでもできる精神科リハビリテーション」野田文隆 星和書房 1995/10 
   東京武蔵野病院が試行錯誤の上で作ったマニュアル。ドーパミン仮説に基づく服薬指導、
   医療チームによるアパート探しや危機介入を含む社会復帰プログラム

4.「分裂病を耕す」星野弘 星和書店 1996/10 
 ”精神科治療学”の連載論文。26年間治療医として工夫を続けた末の、患者の人間的尊厳の
 重視と、細かい気配りあってこそ薬は効果をもたらすという、症例に基づく主張は心を打つ
 明確な治療観なしに退院を勧める昨今の動きに警鐘も鳴らしている

5.「私の分裂病観」中沢洋一編 金剛出版 1995/12
   大学の教授が名前をつらねる学会誌の解説記事みたいな本
   ドーパミン仮説等に対する専門家の裏付けを見たくて購入。裏付け不能と理解した(笑)

6.「精神分裂病のなおし方」田島昭 近代文芸社 1997/9
   さまざまな症例は一気に読めるが、論理の飛躍多く、今ひとつ主張がしっくりしない
   分裂病をもたらすのが、両親や夫などのエゴとの衝突というのは単純な事実として、
   分裂病予防法を設けよとか、あらゆる専門家で考えよとか。熱意のみ伝わる?

7.「精神病はなおる」塩入円祐 NOVA出版 1985/4
   最初に妻が購入した本。保険外診療3ヶ月でなおしてみせるという主張にすがりたくなる
   軽快後のリハビリ施設を別に設けた点ではパイオニア的であろう
   しかし、治療には電気ショック療法が用いられており、いまや裏街道の治療法
   筆者がこの治療法に信念を抱いていたことが伝わり、悲しくすらなる

8.「続精神病はなおる」塩入円祐 NOVA出版 1986/12
   家族の心構えを病気別に症例とからめて紹介

9.「図解 精神病診断マニュアル」雀部俊毅 同文書院 1997
   文献1の続編。パニック障害などの境界例と自己診断テストの材料を記載
   ただし、作りが雑で誤植も100個くらいある

10.「真実の行方」ウィリアム・ディール 福武文庫 1996
   p535「欧米では全人口の2%が、何らかの形で(分裂病)治療をうけています」
   日本の文献はほとんど「世界的に0.7%」を採用しています。多重人格障害と分裂病を混同してもいる。

11.「よくわかる精神医学1 精神病編」西村良二 (株)ナカニシヤ 1997
   山岸涼子や手塚治虫が出てくるけっこうな本で、わかりやすスギルのが残念。
   それでも分裂病に120ページ、鬱病に120ページを割いている。入手やや難。

12.「分裂病がわかる本 わたしたちは何ができるか」E・フラー・トーリー (株)日本評論社 1997 
現在のアメリカの精神医療の実態と、きわめて豊富な統計資料を体系的にまとめあげた実用書。
これ一冊で、アメリカの分裂病者および家族は、弁護士や医療現場に対応する、確固たる見識を得るでありましょう。

13.精神科医篠田重孝(故人)の遺稿集
http://www3.justnet.ne.jp/~kazuokogawa/

14.「精神科治療の覚書」中井久夫 (株)日本評論社 1982 
この初版が16年前だというのが信じられない。
この、平明を目指しながらもメマイを感じるほど厳密な、治療法に関する言質は、何度か読み、反復しないと頭が破裂します。

15.「こころ・と・からだ」五木寛之 集英社文庫 1998 
本書の中では、一般的に闘う敵とされている病気にさえ、五木さんは愛情ある温かい眼差しを向けている。そして、心に、体に病を抱えた自分を認めることからはじめたらどうだろう、と述べている。
(解説より)

16.「閉鎖病棟」ははきぎ ほうせい 新潮社文庫 1997
本書は、つくりものの域をでない。自殺未遂の病者が一人なのに、母殺しの病者が二人登場する。 しかし、私は、電車の中で読んでいて、何度も目が潤んでしまった。「オリエント急行」のような、 読後感と、それ以上に人間への慈愛に満ちた物語。病者と暮らしたことの無い人には、本当には理解できないだろうが、すべての人に読んで欲しい。

17.「分裂病とつき合うー治療・リハビリ・対処の仕方」伊藤順一郎 保健同人社 1998 
「ぜんかれん」連載記事。中井久夫の礼賛者と思われるこの医師の態度も好感がもてる。家庭内のストレスの高さにより、再発率が6倍違うというデータは興味深い。51ページと157ページに注目。

18.分裂病の精神病理と治療 8「治療の展開」中安信夫編 星和書店 1997 
第8回ワークショップの記録。中井久夫、星野弘らの後継者たちの奮闘の軌跡が見える。オキシペルチンの有効例など新しい話も興味をそそる。

19.「精神病」 笠原嘉 岩波新書 1998 
入手が容易で、分裂病の一般常識を普及させる良著。

20.「心の病理を考える」木村敏 岩波新書 1994
現象学など、いささか哲学的に過ぎるが、最後にトーリーの脳病説にも学者らしい謙虚な考察を載せている。

21.「心病める人たち」ー開かれた精神医療へー 石川信義 岩波新書 1990
最初の10ページで、著者の「義憤」に圧倒される。著者は病院を創設。「今の病院はここまでひどくないよ」と言いそうなほど、激しい。医療関係者に読んで欲しい。「お上」と呼び、行政の問題点や、国民を愚弄した情報隠蔽を黙認した、わたしたちの反省点を深くえぐっている。病者には、刺激過多と思う。

22.「分裂病は治るか」 林宗義 弘文堂 昭和57
著者は台湾で生まれ、東大で学んだ、世界精神衛生連盟名誉総裁。彼は、33年を経て訪れた日本の精神医療が、後退していることに驚いた。「日本での分裂病の治療に対する一般の人々の態度と考え方は、私にとっては実に大きな謎であり、最も理解に苦しんだ問題であったと言える。日本の社会には、”分裂病は治らない”のだという通念があるように思えてならなかったからである。」

23.「最終講義」分裂病私見 中井久夫 みすず書房 1998
明るくなっていく病者の絵画を眺めて、救われた気持ちになる。有終の美を感じさせる。ご苦労様でした。

24.「精神科医のノート」 笠原嘉 みすず書房 1976
非常に模範的な、バランスのとれた臨床医の日常を感じさせる。特に、ここ50年の軽症化の傾向を繰り返し述べ、偏見の払拭も訴えている。RDレインの反精神医学の解説がおもしろい。

25.「コメディカルスタッフのための精神障害Q&A生活支援ブック」 蜂矢英彦 中央法規 1995
しごく正統派のマニュアルだが、「作業所を作っちゃおう」など、Questionの設定にユーモアがある。

26.「向精神薬一覧、最近の進歩」 三浦貞則 星和書店 1997
薬の解る本の類いには書いていない副作用や一日量などが書かれている。

27.「夫婦療法」 佐藤悦子 金剛出版 1999
離婚カウンセリングなど夫婦関係の葛藤と危機の打開に向けた支援や気づき。子供の相談から表面化することが多いという。

29.「初期分裂病 補講」 中安信夫 星和書店 1996
初期分裂病を区別しオキペルチン、フルフェナジン、スルピリドなどの辺縁系の処方が有効だったとしている。

28.「自殺の危険」 高橋祥友 金剛出版 1992
病院内自殺予防のマニュアルおよびチームの必要性を説く。寛解期の自殺が65%というシュルテのデータを引用。

29.「心的外傷と回復」 J.L.ハーマン みすず書房 1999
PTSD(外傷後ストレス障害)の基本的教科書。中井久夫の訳文もこなれていて分かりやすい。
p41によると「(一般女性の)四人に一人の女性がレイプされていた。三人に一人の女性が小児期に性的虐待を受けていた」

30.「脳と人間」 計見一雄 三五館 2000
p283にセレモン、ラキーチの論文を引用。分裂病の脳室拡大でニューロンの減少は無いので、アルツハイマー等と異なる。

31.「多重人格性障害 その診断と治療」 P.W.パトナム 岩崎学術出版 2000
今後多重人格障害(MPD)の基本的教科書となると目される本。経験に基づく治療上の注意点が具体的に記述されている。中井/安の翻訳も素晴らしい。

32.「初回エピソード精神病」 Kathy J Aitchison/Karena Meehan/Robin M Murray 星和書店 2000
P60に「クロザピンは無顆粒球症のリスクのため、定期的な血液モニタリングを行いながら処方すべきである。
クロザピン以外の非定型抗精神病薬にはこの制約はないし、多くの研究者は定型抗精神病薬とくらべてより効果的で、
副作用の面でも優れていると考えている。このことは、ドロップアウトの少なさ、すなわちコンプライアンスの改善という形でも
明らかになっている。これら3つの特性を考えると、初回エピソード症例にはクロザピン以外の非定型抗精神病薬が適切である」

ホームへ戻る