電気ショック療法(ECT)受診に関するガイドライン(案)2003/5/26



このガイドラインを特に掲げるのは、この療法(electroconvulsive Therapy)の悪用と濫用に傷つけられた
友人を持つ当事者がおられ、かつまた、慎重な利用により改善された方の家族もおられることで、両者の無用な対立を
経てきたからです。私個人としては、今後も慎重な適用のみをお薦めしますが、それは以下のものです。

1)事前に適用の合意を当事者にとる、急性期で難しい場合は保護者にとり、当事者には事後に説明する
註:医療訴訟の原因としない為に文書での確認が必要です。反復する場合の回数の明記も必要です。
2)服薬治療で複数の処方を試みたが効果の不十分な場合にのみ行う
註:死亡もありうるのはどちらも一緒ですが、「何をされたかわからない」というのは治療的でありません
3)麻酔医の立ちあいのもとに無痙攣で行う
註:昨年から筋弛緩剤利用の無痙攣の適用には保険点数もつきます
4)希死念慮が強く、自傷事故が収まらない場合に限る
註:うつ病への適用は分裂病への有効率より高く、80%以上の数字も散見します。

無用な対立と表現しましたように、当事者も家族も、この病気の過酷な急性期から生還された方のことは
どのような手段であったにせよ、素直に喜びあって頂きたいです。
あらゆる種類の服薬でも改善しない場合の選択肢が残されているのは悪とは言えません。

治療者にとっても不幸な過去の歴史があったのは確かですが、
本人合意と外科手術的手法に基づく無痙攣法は区別しましょう。

他方で、私が慎重を求める理由は、「脳に損傷を与えていないという確証が無い」ためです。
この点に関して、「損傷を与えているという確証も無い」という言い方もできます。
しかし、「実施例が多く安全である」であるという言い方は認められません。
服薬の場合もそうですが、副作用と病気の症状との識別が難しいからです。

わかりにくい否定表現が続きましたが、私が損傷の有無を疑う、以下が根拠データです。

http://www.med.yale.edu/psych/clinics/rTMS.html
http://www.schizophreniadigest.com/index.php/SCN/home
2000年当時、まだ上記メールマガジンが無料だった時に、YALE大学のHOFFMAN教授による
TMS(transcraneal magnetic stimulation)治療の以下のような紹介記事が掲載されました

>Twenty-five patients were administered TMS in the last two
>years and 70 to 80 per cent experienced improvement
有効率は70〜80%ですが、2年間にしては症例が少ないです
これは服薬治療を優先しているともとれます

>About 10 per cent of the patients have reported pain
>during the procedure, Hoffman adds, but no one has refused the treatment
>because of pain.
麻酔は不要ですが、10%に耐えられる程度の痛みがありました。

強力な磁界を変化させることは電流を発生させるので原理はECTに近いものと考えられます。
しかし麻酔が不要で同等の効果を持つのは、すなわち、
電気ショック療法で必要以上の電流を流している疑いが濃厚です。

上記に関する支持するデータも反対のデータも出てきましょうが、
無用な争いを避けるために、質的に上記の範囲内の議論やデータ紹介は反復を
避けて欲しいと考えております

以下の情報は「KEY WORD精神 第3版(先端医学社)」からの引用です。
著者は聖マリアンナ医科大学神経精神科助教授山口登氏です。
禁忌:ECTに関する絶対的な医学的禁忌はない。しかし、相対的禁忌
(かなり高度の危険性が伴う状態)としてつぎの点があげられる。
(1)不安定で重度の心血管系疾患(最近おきた心筋梗塞、非代償性うっ血性心不全、重度の心臓弁膜症など)
(2)血圧上昇により破壊する可能性のある動脈瘤または血管奇形
(3)頭蓋内圧亢進(脳腫瘍、その他の脳占拠性病変による)
(4)最近おきた脳硬塞
(5)重度の呼吸器系疾患(慢性閉塞性肺疾患、喘息、肺炎など)
(6)ASA(米国麻酔科学会)の定める身体状態水準4または5

今後の問題:
現時点における大きな問題点(続発症)は、記憶ならびに認知機能障害と再燃、再発
である。記憶ならびに認知機能障害としては、せん妄、逆行性健忘、前行性健忘(記
憶力低下)などが認められることが多い。したがって、今後は今後は記憶ならびに認
知機能障害の程度を減弱させるための検討が必要となる。具体的には、サイン波治療
器(現在わが国で広く使用されている)から短パルス波治療器への変換ならびに電極
配置、刺激強度、回数、施行期間、間隔、併用薬物などの検討が必要になる。
ECTによる急性期治療の有効性は高いが、6ヶ月以内に約50%が再燃する。
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