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こどもの投薬
根拠: 各記事に記載


こどもの投薬に関する知見
メンテ

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メリットとデメリットを天秤にかけて ( No.1 )
根拠: ちいさい・おおきい・よわい・つよいNo.80 ジャパンマシニスト社 P8  小児科医 山田 真

現在でも薬の大半は症状を抑えたり、やわらげたりするものです。
そういう薬についてメリット・デメリットを考えてみると、
まず「そもそも症状を抑えたり、やわらげたりすることはよいことなのか」という点が
問題になります。

というのは、病気のときに起こる症状の多くは、体を守るため、病気を治すために起きていることが
わかってきたからです。

そこで、こうした症状を薬などでおさえると、しばしば病気の治りが遅くなったり、
病気がこじれたりすることを覚悟する必要があるということになります。

副作用がなくて、よく効く薬は、薬の理想でしょうが、そんな薬はなかなか作れません。
すべての薬に副作用があるのですが、その副作用に強弱があって、
それほどつらくないものからつらいものまでいろいろです。

もともと薬は人間にとって異物ですから、薬が体の中に入ってくると、それを外へ出そうとする
反応が体に起こることがあります。

薬を体の一部分だけに作用させようとしても、血液中に入って体をめぐっているうちに、
他の部分にも働いてしまいます。

そこで、まず不要な薬は使わない、そして使う必要があると思われるときでも、薬を飲むことで
得られるメリット、デメリットとを慎重に天秤にかけ、メリットが上回るときだけ使うように
心がけることが大事です。

メンテ
なぜ、15歳まではひかえたいのか? ( No.2 )
根拠: ちいさい・おおきい・よわい・つよいNo.80 ジャパンマシニスト社 P15〜18 石川憲彦

「薬は、メリットとデメリットをよく考えて使用しましょう」といわれます。
しかし、そう考えてよいのは、15歳以下のこどもでは次の二つの場合だけです。

生命にかかわる危険が予想される場合。
重大な生活の破壊が、長期にわたる可能性が高い場合。

なぜでしょうか?
西洋医学の薬は基本的に大人用、
しかも「いまの一時をしのぐ」ことを目的にデザインされています。

ほとんどの場合、脳に働く薬は胃や腸で吸収され、肝臓で一部変化を受け、
血液中でたんぱく質と結合して全身に運ばれます。
さらに脳や肝臓などで、化学変化を受け(代謝)、
いろいろな物質(代謝産物)がつくられ、最後に腎臓や肝臓などで無害な物質として
尿や便に排泄されます。

つまり作用と副作用は、消化管、肝臓、腎臓、血液成分などの状態に左右されるのです。
当然ながら、肝臓、腎臓と脂肪の多い組織(心臓、骨髄など)は副作用を多く受けます。
とりわけ、脂肪の塊である脳は被害甚大です。

ところが脳は、特殊で限界のある新陳代謝のシステムしかもっていません。
しかも、脳に働く薬の多くは麻薬や覚醒剤と同様に神経伝達物質とよばれる脳機能の中心的物質を変化させる。

この作用が薬の効いてほしい部分だけに働いてくれればよいのですが、
残念ながら脳全体の機能に影響します。
だから、薬が体内にあるかぎり、脳は常に攻撃にさらされているのです。

ここまでは、大人もこどもも同じです。
こどもではこれに加え、発達の問題があります。
臓器の発達は各臓器で異なり、さらに年齢や個人による差がとても大きいので問題は複雑です。

第一に、15歳まで、大人の脳とこどもの脳はまったく別物と考えた方がよいです。
12歳くらいまでは、配線や配管にあたる脳のインフラ整備(シナプス形成)が
大人の何倍も活発になります。
さらに15歳までは、第二次性徴など内分泌系の急変が脳を変えます。
当然、投薬はこういった発達のすべてを妨害するので大人の何倍も危険なのです。

第二に、脳の成長は年齢によって一定ですが、発達の個人差はとても大きいのが特徴です。
発達の評価は15歳くらいまでは年齢だけで評価することができません。

第三に、脳細胞は他の臓器と異なり、一生のあいだほとんど細胞が入れ替わりません。
同じ細胞が節目ごとに質的に異なる段階的変化を示します。
このため、薬の蓄積による影響や細胞の老化や変質に対して、きびしい注意が必要です。

成長と発達によって、大人の機能をもつ部分と未成熟な部分とが混在するのがこどもの脳です。
このアンバランスのため、大人で異常とされる症状がこどもでは正常に出現することがあります。

一方、鎮静剤のはずが、逆に興奮を生むとか、10歳までは依存症が起こりにくいなど、
大人とは異なる反応がでることもあります。

同じ薬、量を使用しても、年齢や体調、成長の変化などによって
作用と副作用は簡単に逆転することもある。
個体差があまりにも大きいので、いまだに、薬の適正な使用量さえ決められないのが実情です。

したがって、どうしても子どもに使用する場合は、血中の薬の濃度をまめに測定する必要がありますが、
あくまでも12歳までは「命がだいじょうぶなら使用しない」、
15歳までは「長い将来を見すえて、投薬をひかえる」のが原則です。
ほとんどの問題は、時間を待てばかならず解決されるのですから。

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薬は脳内化学伝達物質のバランスを崩す ( No.3 )
根拠: ちいさい・おおきい・よわい・つよいNo.80 ジャパンマシニスト社 P19〜24 浜 六郎

脳内では、ドーパミンやノルアドレナリン、アセチルコリン、そのほかセロトニンやGABA
興奮性アミノ酸、脳内モルヒネ、ヒスタミンなど、いろんな種類の化学伝達物質が働いています。

正常な脳活動は、これらの物質が必要に応じてバランスよく作用しています。
少しでもバランスが崩れると、精神や神経が正常に働きません。

そのバランスを是正する目的でもちいる精神用薬剤か、別の目的でもいちるかは別にして
薬剤がそのバランスをかえって崩し、不安や自律神経の異常、記憶や認知の障害、
錐体外路症状などを起こす可能性があります。
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薬の出番はじつは少ない ( No.4 )
根拠: ちいさい・おおきい・よわい・つよいNo.80 ジャパンマシニスト社 P31〜35 小児神経科医 木村 育美

急増している発達障害に関して、薬の投与が必要かどうか考えてみます。
6歳未満のこどもにはコンサータやストラテラなど、
いわゆる「ADHDの薬」は通常、処方しません。
そもそもADHDの正式な診断も未就学児では困難なのです。

薬の出番ではない要素のほうがずっと多いのです。
たとえば、「おちつきがない」原因はなんでしょうか。
ADHDと呼ばれる発達障害の一群は衝動性の高さが目立ち
有名ですが同じく多動を示し、鑑別を要する発達症がであるPDDは、
さらにコミュニケーションの未熟さと過敏性が基礎にあるため、
大人の対応いかんで集団内での本人の適応はより大きく左右されます。

それでも、なお薬の適応がありえるのは、おおまかには衝動性の結果、
「社会的不利益と本人の自己評価の低下」という二次障害をもたらす危険があるとき
と考えてよいでしょう。
けっしてまわりのおとな、親や学校の先生が困るから処方するものではありません。

安易な投薬はされるべきではなく、こうした中でもとくに深刻な事態の例にかぎり、
一時的に薬の適応が検討されます。

ことに、ADHDとPDDとの混在例では、精神面の副作用がより繊細に出やすいのです。
したがって、多動がおもな訴えであっても、PDDを基礎疾患にもつこどもへの処方は
ことさら慎重にされるべきです。

投薬をおこなうにしても、前提として、投薬以外の心的サポートが欠かせません。
具体的にいえば、保護者も学校の先生もこどもを理解して、
普段から、よくできたとき、がんばったときにはかならず、しっかりほめてあげるなど、
本人の自己評価をできるかぎり良好に保つことがほんとうに大切です。
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発達障害、ADHDの治療薬で注意したいこと ( No.5 )
根拠: ちいさい・おおきい・よわい・つよいNo.80 ジャパンマシニスト社 P36〜39 清水 誠

多くの小児科医、精神科医が、ADHDの治療薬を安易に処方しているように思います。
その背景として、まずは医療者側や医療制度の問題があります。

こどもやその親からくわしく話を聞いて環境調整をするのは、
手間と時間もかかるので、まずは薬を出して様子をみたほうが早い、
あるいはじっくり話を聞く時間のない先生だと、そうせざるをえない状況というのもあるでしょう。

また、製薬会社の影響というのも無視できません。
彼らは市場を広げるため、プラセボとくらべて、効果はさほど大きくないのに
効果を過大に宣伝したり、重大な副作用があるにもかかわらず、
「副作用の少ない薬」として宣伝したり、
科学的にははっきり解明されていないのに「脳内の化学物質の不均等を調整するため」と
薬使用のハードルを低くするなど、さまざまな戦略を立てています。

おちつきのないこどもの親に対して、学校の先生が精神科の受診をすすめる背景には、
本来、学校がもっていた機能が低下していることにも一因があります。
こどもの問題行動をすべて医療の問題とみなす、いわゆる医療化(メディカリゼーション)が
進んでいるのではないでしょうか。

私が薬を使うことに慎重になるのは、副作用と脳の可塑性が高いこどもが薬を服用することによって
のちのちまで影響が懸念されるからです。
こどもの精神疾患に対する薬物療法は
科学的に正しい方法論による検証がすんでいないものも少なくありません。

ADHDの症状は、小学校高学年ごろにやわらいでくることも珍しくありません。
つまり、薬を飲まなくても、成長によって改善するケースも多いのです。

私は科学的に根拠のある薬を開発したり、適切に宣伝することに反対しているわけではありません。
薬の援助が必要な子や薬の恩恵を受けいてる子がたくさんいることも事実です。
薬物療法そのものを否定しているわけでもありません。

しかし、過剰な宣伝にあおられて、たくさんのこどもたちが病院に通いはじめれば、
学校や社会のかくれた問題をマスクしてしまうことにならないでしょうか。
こどもの行動の背景にあるものを理解する努力をおこたれば、
こどものさまざまな問題行動の医療化と、薬物への過剰な期待と依存に
おちいりかねない危険をはらんでいると思います。
メンテ

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