Re: 知覚変容発作 ( No.1 ) |
- 根拠: 「チームで変える!第二世代抗精神病薬による統合失調症治療」石郷岡純、吉尾 隆 他2名 中山書店 P61,62
- <<夕方、同じ訴えが繰り返されたら知覚変容発作を疑う>>
精神科病棟の夕方は、患者からの訴えが多くなる時間帯である。 この夕方の訴えの中に、知覚変容発作が含まれてないかどうか吟味する必要がある。
知覚変容発作は夕方に起きることが多く、違和感のある体験なので 患者は積極的に訴えてくることが多い。
夕方に、不安感、いらいら、落ち着きのなさなどの訴えが続くときには、 精神症状の悪化の前兆、アカシジアなどとともに、知覚変容発作を疑って、 「ものの見え方がいつもと違う感じになって、それからいらいらが始まることはないか」 と聞いてみることで鑑別できる。
抗精神病薬の処方される率の高い統合失調症の治療中に、短時間出現するもので、 視覚上の見え方のゆがみ、変容を主体とした症状である。 不安を伴い、患者は「落ち着かない」「頭痛」「神経質になる」などと訴えてくることもある。 しかし、体験の内容を聞いてみると、上記のような知覚の変容が主であることで、 一般の精神症状としてのいらいら感などと、区別できる。 「発作」と称されているのは、始まりと終わりがはっきりしているからである。
知覚変容発作は、クロキサゾラム(セパゾン)、クロナゼパム(リボトリール)などの ベンゾジアゼピン系の抗不安薬、抗てんかん薬などが有効なことが知られている。
知覚変容に始まり、幻聴に移行することもあるが、これらの薬で知覚変容発作を抑制することで 幻聴まで進展しないですむこともある。
知覚変容発作について、統合失調症ガイドラインは次のように述べている。 「発作性に自己違和感的な病的体験を自覚する病態であり、 特に夕方に視覚を中心とした知覚変容体験や幻覚妄想様体験として、発現する。 統合失調症自体の病的体験との異同が議論の対象となっているが、 抗精神病薬の副作用の一つと考えられており、薬剤の減量、他剤への変更を要することが多く、 対症療法として、ベンゾジアゼピン系薬物が有効なことがある。」
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Re: 知覚変容発作 ( No.2 ) |
- 根拠: 知覚変容発作に関する研究 抗精神病薬を副作用とする立場から 内田裕之
- 知覚変容発作に関する研究 抗精神病薬を副作用とする立場から 内田裕之
http://koara.lib.keio.ac.jp/xoonips/modules/xoonips/detail.php?koara_id=AN00069296-20060601-0023
( ↑このサイトからPDFファイルにダウンロードできます。Downloadボタンをクリック)
論文の要約
@知覚変容発作の罹患率は、高力価抗精神病薬のほうが 中、低力価より高かった。
A抗精神病薬で治療を受けている場合、疾患に関わらず 出現しうることが明らかになった。 すなわち、非統合失調症患者にも出現する。
B投与されている抗精神病薬を減量することによって 現疾患の悪化を見ることなしに、本発作は、軽快または消失した。 本発作は、抗精神病薬の過量投与の指標になりうる可能性が示唆された。
36週間で、4割の量を減薬すると発作が軽減または消失した。 精神症状悪化した患者はひとりもいなかった。
C眼球上転(ジストニア)との関連が強い。 知覚変容が出現した36.4パーセントの患者に眼球上転があった。
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Re: 知覚変容発作 ( No.3 ) |
- 根拠: 統合失調症の薬物療法 100のQ&A 藤井康男 編集 星和書店 P280
- (Q86)夕方になると光や細かい模様が気になって苦しいが、
休むと良くなるという訴えを繰り返している患者がいます。 これは知覚変容発作でしょうか?どうしたらいいのですか?
(Answer)内田 裕之
*知覚変容発作の可能性が高いです。 まず症状を詳細に聞き取りましょう。
*知覚変容発作は抗精神病薬の副作用です。
*約3分の1の患者で眼球上転発作を伴います。
*抗精神病薬の減量、または低力価抗精神病薬への切り替えを行いましょう。
*抗パーキンソン病薬やベンゾジアゼピン系抗不安薬も有効ですが 依存形成に注意しましょう。
( 補足 ) 記事NO.2の内田医師の論文には >>2 (7)治療方法 抗パーキンソン病薬によっても本発作は軽快するが その薬剤によって消化器系副作用や認知障害といった 新たな副作用を可能性も否定できないと、あります。
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Re: 知覚変容発作 ( No.4 ) |
- 根拠: 統合失調症の薬がわかる本 八木剛平 コンボ P203
- 第17章 副作用の見分け方 病気の症状と区別しにくい副作用
短時間の知覚過敏症状
「目がチカチカする」「光がギラギラまぶしい」 「音がビンビン響く」などの症状が数分から数時間続きます。 夕方、特に疲れたときに起こりやすく、寝てしまうと治ります。 これまでは、あまり知られていなかったので、 主治医が病気の症状と判断して薬をふやしてしまうことがあったかもしれません。
最近になって慶応大学病院の内田医師が薬の副作用であることを確かめました。 同時に「目がつりあがる」症状であれば、副作用であることはほぼ確実です。 主治医に申し出て薬を増やすのではなく、減らしてもらってください。
( 補足 )
短時間の知覚過敏症状→知覚変容発作
目がつりあがる→眼球上転(ジストニアの一種)
内田医師の論文は、記事NO.2を参照 >>2
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Re: 知覚変容発作 ( No.5 ) |
- 根拠: 最新の精神科医療事情について (H.16.10.16) 八木剛平
- http://www2.tbb.t-com.ne.jp/t-h-k/yagi.htm
あと最近、誤診の問題に関連して経験したことは、一つは薬の副作用で、 これは慶応大学の精神科の内田という若いドクターが、 最近見つけたんですが、『知覚変容発作』というのがあるんです。 よくあるのは、周りがチカチカ見えるとか、音がビンビン響くとか、何か壁にチラチラしたものが見えるとか、 ですから病気の症状とそっくりなんですね。
薬を飲んでいる最中にこういうことが起こってくると、「アッまた症状が出た」ということで薬を増やされる場合が非常に多いんですね。 この発作の特徴は、続く時間が短くて、数分とか、長くて数時間位で、寝ると治るんですね。やっぱり夕方なんかに多いようです。
三分の一くらいの人達に、目がつり上がる、という薬の副作用が合併しているんです。 病気の症状と紛らわしくても、目がつり上がるという症状があったら、これはまず薬の副作用ですから、薬を減らさなければいけないんです。 よく調べてみると、こういう副作用は結構多くて、それで薬を増やされているケースが随分あるようです。 大体その時は、抗不安薬を頓服で飲むか、あるいは寝てしまうとスッと消えるんです。 それがあったら主治医に話して、薬を増やすんではなくて減らして貰わなければいけないですね。 大量の薬を飲んでいる方の中には、この副作用を病気の症状と見間違えられて、薬を沢山飲まされている方があるんじゃないかと思って、 今度の第三版にそれを書いておきました。
第三版⇒統合失調症の薬がわかる本 八木剛平 コンボ >>4
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Re: 知覚変容発作 ( No.6 ) |
- 根拠: 統合失調症を生きる 長嶺敬彦 新興医学出版社 P66〜P68
- (症状のゆらぎ)副作用の増強―知覚変容
夕方の症状のゆらぎで、知覚変容という現象です。
D2遮断率が副作用閾値を超えていると考えられる現象です。
夕方になると光や細かい模様が気になって苦しいが、休むとよくなるような場合です。 「光がギラギラ見えてまぶしい」「細かい模様がやたら気になる」 「光の縁や物の境界線が強く見える」 これに不安や恐怖を伴うような場合です。 このうような症状が夕方、疲れたとき、人ごみのなかで起こることを「知覚変容発作」といいます。
知覚変容発作は山口直彦先生と中井久夫先生が抗精神病薬服用中の患者が、 主に視覚過敏を特徴とする発作を経験することを報告したことにはじまります。
特徴は、@急性発症、A数分から数時間の経過で徐々に軽快、 B夕刻の疲労時に好発、C症候の内容は知覚過敏化、視覚、聴覚、身体感覚にかかわる変容を主体とする。
当初は統合失調症患者さんで見られたので統合失調症の一症状と捉えられました。 しかし、最近では抗精神病薬の副作用という立場が主流です。 慶応大学の内田裕之先生の調査では @罹患率は抗精神病薬が投与されている患者の3、25% Aほとんどが視覚領域の知覚変容、B高力価抗精神病薬で起こしやすい C本発作の3〜4割は眼球上転を伴う。 D統合失調症以外でも抗精神病薬の投与で発症する。 E投与されている抗精神病薬を減量することで精神症状の悪化を認めず軽快または消失する。 F本発作は抗精神病薬の過量投与の指標になる。
と考えられ、抗精神病薬によるD2遮断率が副作用閾値を超えていると考えられました。 その機序としては錐体外路症状と同じようにドパミン遮断、特に基底核でのドパミン遮断が知覚の情報処理に どうも関係するためと推測されています。 知覚変容発作は周りから理解されず患者さんが苦しんでいます。
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Re: 知覚変容発作 ( No.7 ) |
- 根拠: 知覚変容発作、ぜんぜん治りません。
- 統合失調症の治療を受けています。
今、知覚変容発作が出ています。それと同時に、自分の生い立ちが省略されたり、 時間の感覚がなくなったり、変な感じがあります。 減薬しても、なかなか治りません。なぜでしょうか?
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Re: 知覚変容発作 ( No.8 ) |
- 根拠: http://miyoshiyuzuru.net/
- 服薬していたのに治療過程で発症したので、やはり薬剤性の症状と考えられます。
まず、減薬を、原因薬剤の切り替えに徹底されることが必要では? 候補としては漢方薬などです。
松山の笠DRは、ランドセンをおすすめしています http://www.geocities.co.jp/Bookend-Yasunari/4511/l641tikakuhenyou.htm
藤沢の三吉DRの口癖でいくと、「なにもかも、薬だけでコントロールしようとしない方が良い」と考えてはいかがでしょう。 認知行動療法やEMDRなど薬を使わない治療法も選択肢になります。 http://miyoshiyuzuru.net/
「自分の生い立ちが省略されたり」というのは、過去のトラウマ体験が省略されるということと理解されます。 自己治療の一環と考えられますが、過去のトラウマ体験の記憶をおさえつけても、解決出来ません。 安全な環境で体験と今後の対策を表現し、「現在の進化した自分には、同じ結果にならない」という認知に至れば、不安は徐々に解消されます。
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