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漢方薬
根拠: 精神疾患・発達障害に効く漢方薬―「続・精神科セカンドオピニオン」の実践から 内海 聡 シーニュ


精神疾患や発達障害に対して薬物療法を行なう場合、西洋薬一辺倒では難しいことがあります。
しかし、西洋薬を補助するものとして漢方薬をうまく用いれば
向精神薬の副作用を少しでも減らしながら患者の状態を整えることができるのです。



内海 医師は「続精神科セカンドオピニオン掲示板」にて、ボランティアでセカンドオピニオンをアドバイスしていました。
http://mental2.hustle.ne.jp/pub/

本は、アマゾンから注文できます。
http://www.amazon.co.jp/ref=gno_logo

長嶺ドクターの書評
http://www.geocities.co.jp/Bookend-Yasunari/4511/3honutuminagamine.htm

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心身医療と漢方は相性がいい ( No.1 )
根拠: 「こころに効く漢方薬」 杵渕 彰 筑摩書房 P40、41

医学の治療が思わしくない場合に、漢方薬が意外な効果をあげることがあります。
これは西洋薬の効果は土台となる体が弱っているとあらわれにくいのですが、
漢方医学では体を根本からたて直すために改善できたものと考えられます。

漢方医学ではまず体力を上げて、体の生理活動をととのえることから始めます。
そのためには「陰陽虚実」「気血水」の状態を診断し、体内のエネルギーバランスを
正常にさせることが必要です。
そして、症状が「気血水」のどの部分のアンバランスでおこっているかを探ります。
個人の体内でおこっていることを診断し、全体のバランスを調整して根本の体質を改善させる。

結果的にストレスに負けない、強い心を育てるお手伝いをするのが、
漢方医学の醍醐味なのです。

漢方薬の可能性(統合失調症) ( No.2 )
根拠: 「最終講義 分裂病私見」 中井久夫 みすず書房 P81

漢方薬も併用を今後再検討する意義があると思います。
分裂病はひどく消耗する病であるからです。
この消耗に対しては漢方薬が向いてます。
というか、近代医学に安定して使える薬がありません。
また、漢方薬による制御の間接性に積極的な意義が存在するはずです。

漢方薬は養生の薬 ( No.3 )
根拠:  「精神科養生のコツ」 神田橋 條治 岩崎学術出版社 第11章 漢方薬 P171

薬の中では、化学的に合成された西洋薬よりも、漢方薬の方が養生の薬です。

それは、漢方薬がもともと自然界にある植物や
そのエキス数種類組み合わせたものだからでもありますが、
精神科の場合に特に大切なのは、おそらく漢方薬の成分のほとんどは脳に達しない点です。

化学的に合成された薬と比較すると、漢方薬の成分は分子として大きいので、
血管から脳へ物質が入らないように脳を守っている脳血管関門という関所で妨げられてしまって、脳に到達できないことが多いのです。

ですから、漢方薬は、脳以外の体の全体に効き、体を整えるだけです。
そして、整えられて健康になった体が脳を整えるという二段階となり、ゆっくりと効いてくるのが通常です。

それに比べると、化学的に合成された薬は、脳血管関門を突破して直接に脳に作用しますから、
効果は一段階であり、即効性があるわけです。

神田橋先生の処方 ( No.4 )
根拠: 精神科薬物治療を語ろう 精神科医からみた官能的評価 神田橋條治 他2名 日本評論社

(フラッシュバックには?)

四物湯と桂枝加芍薬湯の合方が、フラッシュバックに特効的に効きます。

それからお腹が悪い人は、桂枝加芍薬湯に水あめを入れた小建中湯を出したほうがいいです。

日常的にずっとイライラしたり、落ち着かないとか、いろいろな神経質症状があるのなら、
桂枝加芍薬湯とは芍薬の量がちょっと違う、
カルシウムである竜骨、牡蠣を入れた、桂枝加竜骨牡蠣湯が効きます。

だから、いつもイライラしているような人でフラッシュバックがあれば、
十全大補湯と桂枝加竜骨牡蠣湯を組み合わせるのがいいです。

四物湯は地黄がはいっていますから、薬が有効で効いている間はいいですが、
よく効いて不要になると、必ず胃が痛くなります。
胃が悪くなったら四物湯は使えません。

胃薬が入っているからいいかなと思って十全大補湯に変えてみても、
地黄が効くからもう駄目です。

それでもフラッシュバックがあれば、仕方がないからこれはあきらめて、
エビリファイ、あるいはオーラップを使います。

(緊張に使うのは?)

やはり一番多いのは、紫胡加竜骨牡蠣湯です。
便秘している人は大黄のはいっている、オオスギの12番
便秘していない人は、ツムラの12番

(怒りに使うのは?)

身体幻覚やら身体症状から何か出てくる人は、逍遥散ですから
加味逍遥散を使う。
そして、怒りのテーマであれば、抑肝散ですから、
抑肝散と加味逍遥散の合方を使うと思います。
自閉症には漢方薬(主に大柴胡湯) ( No.5 )
根拠: 自閉症は漢方でよくなる 飯田 誠 講談社 P77


自閉症の人には睡眠障害がある場合が多いのですが、
漢方はそこにもっとも効果が現れます。
われわれでも心配事があれば
顔がさえて夜になって眠れないことがあります。
自閉症の人は緊張が強いため眠れないので
睡眠が改善されることは緊張が緩んだことを示しています。
また、パニックやかんしゃくも減っていき、
ついにはほとんど起こさなくなります。
これも緊張が緩んだ証拠と言えます。

ここまでは、そんなことならどの安定剤や睡眠剤でも得られることで、
わざわざ漢方薬を使う必要はないと思われるでしょう。

しかし、漢方を飲むようになったら、視線が合うようになったり、
コミュニケーションがよくなって、言葉のない子でも
「自閉症とは思えない」と言われることが多いところに
今までの精神安定剤では得られなかった大きな違いがあります。

緊張が緩む、神経(脳)がゆったりとするということは
過敏でなくなることでもあります。

飯田医師の論文
http://www.iida-neurological-clinic.biz/dissertation/index.html

(要約)

筆者は自閉症の情緒障害の改善のための漢方(日本の伝統的薬草)を探してきた、
そして、1993年に大柴胡湯と幾つかの漢方がそれらの改善に効果的であることを発見した。
この報告は自閉症の家族によるこの治療に対する2001年12月の評価である。
調査はNRSの方法が応用された。治療の開始年齢は2才4か月から32才3か月であり、期間は2か月から9年6か月である。

対象数は女性6名、男性68名である。
50パーセント以上の改善率は男性においては睡眠障害100%、多動92.5%、癇癪88.3%,パニック95.6%、自傷82.1%、突然の暴力89.5%、
同じ状態に対する固執74.4%、強迫的行動65.2%、儀式的行動95.5%、理解力86.2%、コミュニケーション85.3%、会話能力32.4%、
グループ活動の参加76.2%であった。

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